集団で議論して出た結論が良いとは限らない
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なんでもかんでも会議で決めようとする現代社会の落とし穴

強いリーダーシップがあると、それを多くの人は独裁者とかワンマンだとか、あまり良からぬ表現をする事が多いですよね。

3人寄れば文殊の知恵」と言いますが、それを心理学的な視点で考えますと、そうとも限らないのです。

例えばこんな実験例があります。

安定した生活を送っていたAさんがベンチャー企業から転職の誘いを受けた。
給料は数倍になるが転職先の会社がうまくいくかどうかはわからない。
この場合、会社の成功する確率が何割だったら転職すべきか?

 

同じ質問を複数の被験者にして一旦回答を得ます。

その後、一部の被験者を集めてグループになってもらい、この議題に対して議論をしてもらいました。

その結果どのような結論が出たかと言うと、各個々人が最初にした回答よりもグループで議論した結果の回答の方が、リスクの高い決定が行なわれた事がわかりました。

そしてその数週間後に再び1人1人から再度回答をもらったところ、グループで議論しなかった被験者たちの回答に変化は見られませんでした。

でも、グループでの議論に参加した人達の39%は、自分の意見をよりリスクの高い回答に変更しました。

逆に、リスクの低い回答に変更した被験者はわずか16%でした。

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集団極性化という心理のよって思わぬリスクもある事を知っておこう

この実験では、1人1人が考えて出した答えでは、それぞれの個々人が考えるリスクや展望を考えながら回答をしていたにも関わらず、集団化したときに出される答えは、ハイリスクな方向へ変化してしまう、という事を証明したものですが、これを社会心理学では「集団極性化現象」または「集団成極化現象」と言います。

 

京都学園大学の社会心理学教授である有馬淑子先生の論文がこちらにアップされています。

集団討議による態度変容

 

個々で考えて出された判断や行動傾向、更には感情までもが、集団での意見交換をする中で、極端な方向へ変化してしまうというもので、これは現代社会で身近な所としては、インターネット掲示板などが該当します。

類は友を呼び凶暴化する掲示板

 

この集団極性化現象は、例えばインターネットの掲示板などを見ていると、同じような意見には似た者同士の意見が集まりだし、少数派である反対意見に対しては徹底的に叩き合う構図は、誰もが良く目にする事ではないでしょうか?

 

そのときの事を思い出してみてください。

次第に多数意見の人達の判断や傾向はエスカレートし、激しい言葉へと変化していきますよね。

そのようにして自分の意見と近い意見の者同士が意見交換をしていく事で、次第に偏った方向へ集団単位で染まっていき、結論が極端な方向になってしまうのです。

 

集団極性化現象には2つの方向があり、よりリスクの高い方向へ偏ることをリスキーシフト、それとは反対により安全な方向へ偏ることをコーシャスシフトと呼びます。

 

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集団化による良い面と悪い面を知った上で自分はどうするべきか考えてみよう

 

集団極性化現象は、多数派意見をより確立するために、相互の立場を支持し補強しようとする心理から生じる現象と言われています。

また、自己を主張したい、自分を誇示したいと言った心理も働いているようです。

 

今の世の中は、国の政治、国際社会においても、集団決議により行われる仕組みになっていますし、それ自体は民主的な決議方法ですので、否定すべきことではありません。

だからと言って、心理学的な視点から考えますと、何から何まで会議で決めるという傾向は、必ずしも良い結果になるとは限らないのです。

 

社運をかけるような重要な会議、自分の人生を決めるような大事な話し合い、そのようなシーンで幹部会で議論して決める、友人達に相談して多数意見に従ってみる、というのは、このようなリスクも含んでいるという事を知っていて損は無いでしょう。

 

ときには天の一声、あるいは自分の心の声で決定することも大切なようですね。

 

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