頭を使わないはずの単純作業がなぜ疲れるのか
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実は単純作業を続ける程難しい事は無いのです

アメリカの自動車メーカーであるフォード。

2015年にマツダとの資本関係を解消し、2016年に日本市場を完全撤退したのは、まだ記憶に新しいところ。

その創立者である、ヘンリー・フォードが開発、1908年に発売されたT型フォードは850ドルという低価格だったことから大ヒットとなりました。

そして、1927年には生産台数が1500万台を突破。

フォード社はその地位を確固たるものとし、大いに潤った収益を工場の従業員に8時間労働で日給6ドルという、当時としては破格の給料を支払っていました。

ところが、それでもフォード社に従業員が長居することは少なく、1日に100人以上もの従業員が辞めることも珍しくなかったそうです。

 

それだけ好条件の「給料」を支払いながら、仕事の内容も複雑ではない単純流れ作業であったにかかわらず、なぜ従業員は辞めていってしまったのでしょうか?

心理学的に言う「心的飽和」状態は人間のやる気をそぎ落とす

 

フォード社が従業員を繋ぎ留めることができなかった理由は、心理学でいうところの「心的飽和」にあります。

 

これは、同じ作業を繰り返し行なわせていると、やがて続ける意思がなくなり作業を放棄してしまう現象のことで、次のようなプロセスで発生します。

 

  1. 作業をする意味が次第にわからなくなる。
  2. 作業の質が低下しミスが増加する。
  3. 作業に対する嫌悪が生じる。
  4. 感情が抑えられなくなる。
  5. 肉体的に作業が続けられなくなる。

 

疲労が「続けたい意思はあるが続けられない」のに対し、心的飽和は「続ける意思そのものが消失する」という点で大きく異なります。

 

また、疲労は数日休めば回復しますが、心的飽和は続ける意思が回復しないこともあります。

 

映画『モダン・タイムス』で、チャップリンはひたすらねじを締める作業を繰り返した末に我を失い、歯車に巻き込まれて病院送りになる労働者を演じましたが、これは心的飽和を的確に描き出しています。

 

探してみましたら、ちょうどそのシーンがYouTubeにアップされていました。

 

工場の単純作業を続けているチャップリンは、徐々に自我が崩壊していきます。

 

そして完全に我を忘れた状態となり、ついには・・・

 

余談ですが、本当にチャップリンという役者は、天才だったという事が、今改めて観ても思う次第です。

 

心的飽和を回避する最良の方法は1人の手順を多くする事

ちなみに、心的飽和は作業が複雑で手順が多いほど起きにくくなります。

 

精密機器メーカーのなかには、ラインを廃止して一人がひとつの製品をある程度最初から最後まで組み立てる、という方式を採用している所もあるそうですが、これは生産性と言う視点からすると効率を落とすことになりますが、従業員にとっては有難いシステムと言えるのです。

 

もっとも、世界の最新工場では、このような単純作業もほとんどが自動化されていますから、最初から最後までを一人で製作するケースと言うのは、試作品だとかモックの様な大量生産前の段階だけになっています。

 

例えば内勤者の方で、日々単純作業を繰り返して行われているような人は、この心的飽和には十分に注意し、一定時間ごとに休憩を入れたり、頭を切り換える時間を取り入れるようにしましょう。

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