満員電車が不快なのは、自分の縄張りに他人が侵入しているからです
昨今の日本企業でも、多くの企業がフレックスタイム制を導入しています。
そのためか、幾分は通勤ラッシュも緩和されてきたとは思います。
更に私鉄線との接続も進みましたので、一時期よりはまだマシになってきたと言えるのかもしれませんね。
それでも、朝の出勤時間の埼京線、中央線、京王線などは目を見張るほどの、相変わらずの満員電車ぶりですよね。
JR東日本によると東京都心に向かう電車の中には未だに乗車率250%を超える電車もあるそうです。
満員電車というのは不快なものです。
それは、他人が「パーソナルスペース」に侵入してくるためです。
パーソナルスペースの目安
通常、親しくなるつもりのない人が半径45cm以内に近づくとストレスを感じると言われていますが、電車内の場合は乗車率100%でも周囲の人との距離は半径25cm以下にしかなりません。
本来なら恋人や家族しか入ることのできない距離に赤の他人が容赦なく入ってくるわけですから、不快になって当然です。
しかしここで皆さんにお聞きしてみたい事があります。
まわりにいるのが知人や恋人、家族だけだとしたら、どのような反応になるかわかりますか?
実はそのような親しい人達だけの電車の場合、とてもではありませんが定員の2.5倍もの人は乗り切れない、というのが答えになるのです。
電話ボックスを使ったユニークな実験
それを証明するため、ユニークな実験が行なわれたことがあります。
まず、「電話ボックスに何人入れるか実験をしたい」と言って無関係の男女を集めました。
そして最初にリハーサルと称して挑戦したところ、10人入ることができました。
ところが、いざ本番となったときには6人しか入ることができませんでした。
なぜリハーサルでは10人もの人が入れた電話ボックスが、本番では6人しか入れなくなってしまったのでしょうか?
その答えは、リハーサルから本番の間に参加者同士が親しくなってしまったために、このような本番の結果になってしまったのです。
その理由を心理学で説明します。
他人をモノとしてとらえることを「没人格化」という
親しくなる前は「没人格化」といって他人を人間ではなくモノとしてとらえることができたために、電話ボックスに何人はいるかと言うテストにおいては、遠慮なくギュウギュウ押すことができました。
しかし、その後参加者同士で会話をしたり、親近感が生まれ親しくなったために、お互いの遠慮や差恥心が生じてしまい、押したり身体を密着させることができなくなってしまった為に、本番では6人しか入ることが出来なかったのです。
知人や会社の同僚と混んでいるエレベーターや満員電車で顔を合わせても、チラリと目くばせするだけで知らんぶりを決め込む等の経験をした事はありませんか?
これも、コミュニケーションを遮断して相手を「モノ」と思うための行為と言えるでしょう。
とは言え、知っている人に会ったなら、やはり人間社会に生きるものの一人としては、目くばせでも良いのですから、「没人格化」などせずに、挨拶くらいはできる人間でありたいものですね。